弱者の味方
突然ですが、フィリピンで商売をするということは、日々戦いの連続でもあります。
日本人の感覚からしたら、こちらは決して間違っていないのに、妥協せざるを得ないことや自分で自分を納得させるしかないことが、山ほどあります。
当社では、従業員全員にとある誓約書にサインをさせています。
その誓約書の内容は主に、1:無断欠勤をしたら罰金を課す 2:退職する場合には最低1か月前にその旨を伝える。怠った場合には罰金を課す という2点です。
これは無断欠勤をする従業員や、ちょっと気に入らないことがあるとすぐに「今日で辞めます」という従業員がとーーーーーーーーーーーーーっても多いからです。
代わりもいないのに急に辞められるとこちらも非常に困るので、特に2については重い罰金を課し、毎回の給料時に「貯金」という形でいくらかずつ強制的に貯金をさせ、急に辞める場合にはその貯金は罰金として没収する、それが嫌なら最低1か月は続けなさい。そうすれば貯金は辞める時にちゃんと返してあげるから、という形をとることにしました。
この効果は絶大で、「今日で辞めます」という従業員がかなり少なくなり(それでもまだいる。笑)、例えそう言っても「誓約書にサインしてるよね? 罰金があるから、貯金と今日までの給料は渡せないよ」というと1か月はちゃんと仕事を続けたり、はたまたその1か月のうちに冷静になり「やっぱり今後もここで働き続けたい」と言ってきたりするようになりました。
しかし、それでも中には本当にわからず屋がいて(というか、わかりたくないだけ?)、「もう今日で辞めたい。貯金も給料も今すぐくれ」といってゆずらない輩がいました。
「くれないのならバランガイ(日本でいう村役場のような所で、住民同士の揉め事があると皆まずはここへ駆け込む)へ行ってやる!!」というので、こちらも(本人の署名入りの書類を握っていることもあり)強気にでて「行きたければ行け!!」と言ってやったところ、本当にバランガイに駆け込まれました(爆)
数日後、バランガイのスタッフがやってきて「おたくの元従業員から、給料と貯金が未払いだという訴えがありまして・・・」というので、件の誓約書を見せ、本人の署名が入っていることを示したところ、バランガイスタッフも苦笑いし、「とりあえず一度バランガイ事務所の方に来てもらえませんか?訴えがあった以上、こちらも双方の言い分を聞いて書類を作成し、解決すれば書類にサインをして頂かなければならないのです。」というので、仕方なくお釈迦夫と共にバランガイ事務所に行くと、訴えた元従業員がバランガイスタッフと共に待っていました。
元従業員「給料と貯金をくれないんです」
悟空妻 「彼はこういう書類にサインしていて、罰金があるので給料も貯金も渡せません。というか足りないくらいなんです。」
何人かのバランガイスタッフが「ふむふむ」とばかりに書類を覗き込み、貯金や給料はいくらくらいあるのか聞いてきます。
元従業員 「マム達にとっては、はした金じゃないですか!」
悟空妻 「(そういう問題じゃないんだよ!!と思いつつ)あなたが罰金を払ってくれたら、貯金も給料も払うわよ」
元従業員 「地元に帰る交通費もないんですよ!?」
悟空妻 「(そんなの知ったことかよ!!と思いつつ)だから辞めるって言ったときに、貯金と給料が欲しいなら最低1か月は働けって言ったでしょう?それも嫌だと言って飛び出していったのはあなたじゃないの」
ここでバランガイスタッフが仲裁に入ります。
腕の見せどころです。
バランガイスタッフ 「あのね、私の考えでは、この元従業員がもっとひどい嫌がらせをしてくる前にこの場で解決しておいたほうがいいと思うの。半額くらい払うってことで、どう??」
何でそうなるの???
さらに信じられないような言葉が飛び出します。
バランガイスタッフ 「もうすぐクリスマスなんだし、ね?」
バランガイスタッフも多分元従業員が悪いということは分かっていたと思います(こう思って、自分を納得させたい悟空妻です)。
でも彼らは弁護士でも何でもないので、正しい方の味方ではないのです。
かわいそうな方、弱い方の味方なのです。
そして、私たち日本人はここではやっぱり外国人で、「別に払える金額でしょ?交通費もないって言っているんだから、少しくらい渡してあげなさいよ」となるわけです。
「例えどんなに少額でも、自分が納得できないお金は払いたくない」と思うのが日本人的感覚だと思います(というか少なくとも悟空妻やお釈迦夫はそうです)。
でも、ここでそれは通用しないのです。
結局、元従業員の地元までの交通費に毛がはえたような金額(←交通費だけ払おうとしたら「彼もお腹が空くから」と説得された)を支払い、一件落着となりました。
あ〜〜〜〜〜、頭にくる!!!!(怒)