釈迦的思考

当たり前のことですが、お釈迦夫と悟空妻はその名の通り、性格も考え方もまるで違います。


衝突することも多々ありますが、よ〜く話し合って(よく話し合わないと悟空妻には理解できない場合が多い)、お釈迦夫の考えを理解する度に、悟空妻はいつも「あぁ、この人のようにはなれないなぁ」と思います。


ちょっとした行動一つとっても、その違いは反映されます。
例えば、食べきれなくて残ったおかずを従業員にあげるとき―

悟空妻の場合→ 冷蔵庫から出して、そのままあげる(冷蔵庫で保管しておいてあげただけでも優しいだろうという考え。冷蔵庫がない人も沢山いるので)

お釈迦夫の場合→ 冷蔵庫から出して、チンしてあげる (お釈迦夫はこれくらい普通だと思ってやっているらしいけれど、悟空妻には思いつきもしない行動。このへんが例え言葉が話せなくても、スタッフから「サーは優しい」と言われる所以?)



こんな風に違う二人ですが、悟空妻は悟空妻なりに(お釈迦夫はお釈迦夫なりに?)この違いを受け入れて、何とかここまでやってきています。



ちょっと前置きが長くなりましたが、本題にはいります。

先日、新しく乳加工兼配達担当として雇ったAという女の子(18歳)が、「ちょっと事情があって、できれば2000ペソ(4千円くらい)を給料から前借りさせてほしいんです。今後少しずつ返していきますから」と携帯メールで申し込んできました。(こんなことを携帯メールで言ってくるのもどうかと思いますが、そこは若いから仕方ないかと目をつぶることに。)


フィリピン人を雇っている人で、給料の前借りを申し込まれない人はまずいないと思います。 必ず一回は言ってきますので、心のご準備をお忘れなく(笑)


こんなとき、私達の場合は「働いた分までは渡すけど、働いていない分までは渡さない」ということにしています。 つまり給料日が毎週金曜日と決まっていたとして、火曜日に「お金がいるので給料を前借りしたい」と言われた場合、月・火曜日分は働いたからあげるけどそれ以上は無理だよ、ということにしています。つまり<金が欲しければまず働け>ということです(爆)


で、今回のAの場合、2000ペソ分は全然働いていないので当然NGということになります。

お釈迦夫 「何か事情があるみたいだから、とりあえず理由を聞いてから渡すかどうか判断したほうがいいんじゃないか?」

悟空妻 「理由なんか聞いたってどうせ誰々が病気で・・・とか言うに決まっているよ。そんなこと言われて貸さないなんて言える?? 下手に理由なんか聞いて、貸さないこっちが人でなしみたいな展開になるよりは最初からそういうことは認められないって言いきったほうがいいよ。それに1回許したら絶対また繰り返すし、他の従業員だって自分も貸してくれっ言ってくるよ。きりがないよ」

お釈迦夫 「・・・」



その日、仕事が終わった後、Aがおずおずと切り出しました。

A 「マム、昨夜の私のメール、見てもらえましたか?」

悟空妻 「うん、見たけどね。無理だから(キッパリ)。」

A 「えっ・・・」

悟空妻 「だってまだ2000ペソ分、働いてないでしょ?」

A 「でも、私の今後の給料から差し引いていいですから」

悟空妻 「そういう問題じゃなくてね。まだ働いてないでしょ?? うちは働いた分は欲しければ今日にでもあげるけどね、働いてない分まではあげられないの。そういう会社の決まりなの。」

A 「会社の決まりですか・・・」

悟空妻 「そう。従業員のRもね、前に同じようなこと言ってきたけど働いてない分は渡せないよって断ったの。うちはそういう決まりだから、理解してね。」

A 「・・・わかりました」



冷たく言い放った悟空妻― こういう汚れ役はいつも悟空妻の役目です。(まぁ、キャラにも合っているからいいんだけど)



Aが帰ってから数時間後―。

お釈迦夫 「でも、もし本当に困っていたらどうするんだ?」

悟空妻 「(まだ言ってるのかと思いつつ、)本当に困ってたらもっと必死で言ってくるよ。こんな簡単に引き下がるくらいなら大した事情じゃないんだよ」

お釈迦夫 「そうじゃなくて。今後他の従業員でも本当に困っていたらどうするんだ?それでも会社として貸さないって言うのか??」

悟空妻 「・・・。でも本当に困っているかどうかなんてわからないし、一度貸したらきりがないよ。貸した次の日からパッタリ来なくなったりしたらどうするの?」

お釈迦夫 「だから、スタッフ全員の連帯責任っていう形にしようよ。俺達じゃ本当に困っているのかどうか判断がつかない場合だってあるだろう。だから誰か一人が本当に困っているから貸してほしいって言ってきた場合は、スタッフみんなを集めてミーティングして、もし借りた人間が返さなかったら全員の給料から一定の金額分を引くけどそれでもいいかって聞いて、みんなが良いって言ったら会社として特例で貸すことにしようよ」



正直、また負けたなぁと思いました。(勝ったも負けたもないのでしょうが。笑)

「フィリピンで酪農をしよう!」とか、お釈迦夫はいつも悟空妻には考えもつかないようなことを言い出します。
最初は「はぁっ???」と思うこともよくありますが、じっくり話し合って、きちんと考えを聞いてみると実に深い・・・そして悟空妻はいつもひっそりと敗北を認めて「ヘイヘイ、わかりましたよ」とお釈迦夫の意見に従うのです。



今回お釈迦夫が考え出した特例がいつ適用されることになるのかわかりませんが(できればずっと適用されないといいけど)、もし適用されたとしても、きっと会社としてプラスの方向に働くと思います。


そして悟空妻は、一生かかってもお釈迦夫みたいな考え方の持ち主にはなれないのでしょうが(別になりたいと思っているわけじゃないので、なれなくても全然いいんですけれど。笑)、この釈迦的思考にきっと一生付き合わされるのでしょう(笑)