繁殖を制する者は酪農を制する

最近、フィリピンで酪農を始めたいと考えていらっしゃる方々(意外にも複数名!@@)からちらほらコンタクトを頂くことがあります。

こんなアホなこと考えてやっているのは自分達だけだろうな〜と自虐的だった悟空妻も、今ではすっかりパイオニア気分です♪(←調子に乗りやすい)




さて、表題の「繁殖を制する者は酪農を制する」とはこの業界でよく言われている言葉です。
これはどういう意味かというと、当たり前の話ですが乳牛は子牛を産まないと乳がでません。 また分娩後一年も経つとお乳も段々でなくなってきてしまいます。ということは、毎年きちんと牛を妊娠・出産させなければ、継続的に乳を搾ることは不可能ということになります。


つまり、いかに牛の繁殖管理(要するに種付け)が上手くできるかによって牧場経営の命運が分かれてくるということです。
上手く種が付いて、しっかり毎年子牛を産んでお乳を出してくれるモ〜娘は「優等生」、なかなか妊娠せずに乳もでなくなってしまうモ〜娘は「ただ飯食らい」になってしまいます。




日本に居る時、悟空妻は大学在学中に牛の人工授精師の免許(←こういうのがあるのです。しかも国家免許!)を取得し、日本でも有数の大型牧場で専属の人工授精師として働いていました。そのときの成績は自分で言うのも何ですが、決して悪いものではありませんでした。 なので、こちらで酪農を始めるにあたって「(お釈迦夫が牛の世話全般をやるけれど)悟空妻が牛の種付けをする」というのは当然の流れでした。


意外と保守派な悟空妻は「ひとまず一年目だし様子をみよう」ということで、分娩後発情がくるのを普通に待っていたのです。
しかし、以前の日記にも書いた通り↓↓(http://d.hatena.ne.jp/cowple/20110802/1312277973)、発情が全くきませんでした。驚いたことに分娩後2ヶ月以上経ってもこなかったのです。


この時点で60〜80日程無駄にしてしまい、青ざめた悟空妻は何とか発情がくるようにとアノ手コノ手で手を打ちました。

こうして何とか発情がきて人工授精を行いましたが、次の問題はきちんと受胎するかどうかです。
人工授精を行ってから、45〜60日程度で妊娠鑑定をします。通常この間に発情がこなければほぼ妊娠していると考えられます。


発情がこなかったためワクワクしながら妊娠鑑定を行ったところ、鑑定を行った3頭中1頭しか妊娠していませんでした(爆) 
他の牛は妊娠しておらず、通常なら発情がきていたハズなのです。でも毎日毎日牛を見ていて、発情に気が付かなかったというのは考えづらいので(お釈迦夫も悟空妻も牛に関して素人というわけではないので)、「牛の発情兆候が非常に微弱だった、もしくは兆候を示さなかった」と考えるのが自然だと思います。

このように熱帯地域では暑さによって牛の発情兆候が微弱になったり、兆候そのものを示さなくなることがままあり(日本でも夏場はこのようなことがしばしば起こり、夏場の繁殖成績は下がります。ヒートストレスと言います。)、これが熱帯地域での酪農は難しいと言われる一つの大きな要因でもあります。

頭ではわかっていたつもりでも1頭しか妊娠していなかったという現実に、あまりの衝撃で頭が真っ白になったことを覚えています。
このときほど、日本とは勝手が違うんだということや熱帯地域における繁殖管理の難しさを痛感したことはなかったかもしれません。



そしてこの頃、「こんなに種が付かないんじゃ、夜も眠れないよ・・・」とお釈迦夫に悩める心情を吐露したところ、「嘘つけ、よく寝てるから大丈夫だよ。ハハッ」と一笑に付されたことも今となっては良い思い出です。



この出来事があってから、このままでは駄目だということで「攻め」の繁殖管理に方向転換し、今現在では1頭を残し(←でもまだ1頭残ってる^^;)、全頭無事妊娠しました。 でも日本に居たときには考えられないようなお粗末な繁殖成績に、2年目のリベンジを固く心に誓った悟空妻。


忘れないように、対策を書き記しておこうと思います。
1.乾乳期の管理をしっかりする(←お釈迦夫の仕事)
2.分娩後40日位から手を打ち始める(←ちょっと専門的になるので詳述は省きます)
3.発情がきたら、2〜3回人工授精を行う(←しつこく種付けをする)


これが約1年(あと1ヶ月程で牛を飼い始めてから1年です)、フィリピンで酪農をやってきて繁殖管理について悟空妻が感じたことです。
これをしっかり頭に叩き込んで、2年目こそは是非繁殖を制し、酪農を制したいと思います!><